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私は、父の本当の子供ではないのに、今までたくさんの愛情を掛けてもらい。お金を使わせてきた。
それは、知らないうちに、母の思惑通りになっていた。
父には、自分の子供を持ち、育てるというチャンスもあったのに、私が居たために、そのチャンスも手放させたのだ。
父に愛情をもらってばかりで、私は奪うだけの卑しい子供だ。
血の繋がらない私が父の元に居ていいのだろうか?
私は黙ってうつむき、何も言わずに立っていた。
そこに父の声が降り注ぐ。
「愛未……お前、知ってたのか?」
私は、何を答えればいいのかわからず、返事が出来ない。
すると、父の声がもう一度聞こえる。
「答えてくれ。お前、知ってたのか?」
喉がカラカラに乾いて、唇が震える。
やっと、出た声は小さかった。
「お母さんから聞いて……知ってた、少し前から」
「じゃあ、なぜ黙ってた?俺に、言わなかったのか?」
父の声は焦っていた。それはまるで私を責め立てるように。
父だってこの状況に混乱しているって、わかっているのに、私の気持ちは追い詰められていく。
「なんでわざわざ言う必要がある? 知らない方が幸せだったんじゃない」
混乱した頭で発した言葉には、トゲがあった。
裏切っていたわけじゃない。父を傷つけたくなくて、言えなかっただけなのに……。
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