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「お前、何言ってるんだ? 俺はお前を育てたんだぞ! お前のために、ずっと……」
そんなことはわかっている。父が自分を犠牲にして私のために、いろいろしてくれていたって。
でも、母に突然、父とは血の繋がりがないとか、本当の父親が居るとか、聞かされて、どうしていいのか分からなかった。
「お母さんに、私の事、無理やり押し付けられて迷惑だったんでしょう」
「バカ言うな。お前、俺がどれだけお前のために苦労してきたか分かってるのか?お前、それ本気で言ってるのか?」
そう、私は父の犠牲の上に育ってきたのだ。
私が居たせいで、父はどれだけ大変な思いをしてきたのだろう。
本当の子供でもない私のせいで……。
「だから、私の存在が迷惑だったんでしょう?」
「バカな事を言うな!!」
「うるさい!」
父の言葉を遮るように、私は叫んだ。
もう、私の頭ではどうしていいのか全然わからない。
父にとって、私は奪い取るだけの存在なのだ。
「うるさい、うるさい!もう、どうでもいい!だって……本当の父親でもないくせに!」
そう叫んだ瞬間、なにもかもメチャクチャになって、世界が壊れてしまえばいいと思った。
すると、父がポソリとつぶやいた。
「そうか、分かったよ」
父がようやく絞り出した力のない小さな声は、私の胸に突き刺さった。
「もう、お前の好きにしろ」
私の世界が壊れた瞬間だった。
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