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「田部さん、お届け物です」
配達人が開いた門から入る。
その横を「ただいま」と言いながら、一歳半くらいの男の子が走り抜け、その後に男性が続く。
「お帰り、恭介。あなた、お帰りなさい」
荷物を受け取りに出てきた女性が、二人に声をかけ、『この子のこの言葉のためだったら』と抱き上げ、爽やかに晴れ渡った春の空を見上げる。
その家は、立派な門柱のある西園寺家であったはず。でも今は、その表札には『田部』とあった。
洋子のところに後藤が訪問して二年半ほど経っていた。
今、田部は西園寺建設の社長に収まっている。妻は三年ほど前から交際していた女性のようだ。
そのとき、門前に黒い車が停まった。どうやら警察の車らしい。
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