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後藤は、まだ肝心な話が残っているとでも言いたげな表情を見せたが、洋子の勢いに気圧されたのか「そうですか、それではひとまず今夜のところは」といって、玄関に向かう。
玄関を出るとき、後藤は「それではこれで。近日中にまたお邪魔させていただきます」という言葉を忘れなかった。その口調はここに入ってきた十数分前とは違って、腹の底からでた、人を脅すような声色に響いた。
洋子は、扉が閉まると同時に内鍵を閉めた。
そして、そのままパジャマに着替えるとベッドに向かう。
横になると後藤が残した『謙一の父親』という言葉が耳の奥にこだまする。その意味はなんだろうか。これからどんなことが起こるのだろうかと思うと、夫がいなくなった寂しさに加え、新たな不安が広がっていくのを感じた。
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