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はしゃいでいるせいか、マシューの声がリズの耳に届く。街には多くの人が行き交って騒がしいはずなのに、まるでリズの近くで話しているかのようにはっきりと聞こえた。 「駅前のカフェ行かない?限定パフェがおいしいんだって。マンゴーのパフェらしいよ!」 マシューは女性の手を引き、人混みの中へと消えていく。その後ろ姿をリズは目にしたままその場から動けなかった。頭の中では、数日前に会ったマシューとのことが浮かぶ。 「最後に二人で外に出掛けたの、いつだっけ?」 マシューの笑顔もリズは目にしていない。ただ虚しさが込み上げ、彼女は唇を噛み締めながら自身の暮らすマンションへ帰るため踵を返した。 1LDKの部屋には、リズの好きなものが詰め込まれている。好きなアーティストのポスターやCD、最近始めたギター、カフェ風のインテリア、カジュアル系の服、どれもリズの大切なものだ。 ソファに座り、リズは冷蔵庫で冷やしてあったビールを口にしていた。大好きなお酒を体内に取り込むことでこの気持ちを誤魔化そうとした。しかし、頭の中では先程のマシューの笑顔がチラチラと見えてしまう。 (全然おいしくない……)
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