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少し棘のある言い方をしてしまったリズに対し、マシューは少し怯えた様子で言葉を返す。先程女性と歩いていた時とはまるで別人である。 (そんなに私が怖いなら、ここに来なければいいのに) リズは内心そう思ったものの、口にすることはない。長く一緒にいる時間が長かったせいで、互いに離れたくても離れることができないのだ。 「ビール、僕も飲んでいい?」 「冷蔵庫に入ってるから勝手に飲んで」 リズはそう返した後、箱の蓋を開ける。そこには何種類もの切手が入っていた。 「この切手可愛いね。最近集めたの?」 ビールを一口飲んだマシューが一枚の切手を指差す。黄色のリボンが描かれたものだ。 「ええ」 リズは頷いてビールに手を伸ばす。会話はそこで途切れた。オレンジに燃える夕焼けが部屋に差し込む中、ビールをただ口に含んでいく。 マシューと初めて会話をしたのは、この切手コレクションがきっかけだったことをリズは思い出す。あれは小学校一年生のことだった。
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