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マシューは花を育てるのが趣味で、育てた花をたまにリズに渡してくれた。まだ幸せな関係だった頃、よくマシューはリズに花言葉を添えて花を渡してくれた。
『ひまわりの花言葉は「私はあなただけを見つめる」なんだ。ずっと僕はリズのことを好きだから』
過去にそんなことを話していたことを思い出す。リズは笑いそうになった。今のマシューには花言葉を添えるほどの想いは残っていない。
(さよならを言えたらお互いに楽なのにね)
笑い合ってきっと互いの人生を歩いていけるだろう。しかし、リズもマシューもその一言が言えないのだ。長く続いた関係を終わらせる。その一歩を踏み出せない。
「ねぇ、私のこと愛してる?」
ふと訊ねた。マシューは一瞬顔を強張らせた後、ぎこちない笑みを浮かべて言う。
「嫌いじゃないよ」
それだけ言うとマシューは目を逸らした。リズも彼ではなく窓の外を見る。オレンジの夕日はまだ空に輝いていた。その美しい光を見つめながら、リズは強く思う。
(このまま消えてしまえたらいいのに)
とっくに枯れた愛の中、二人はいがみ合って許し合う。
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