星のあなた-1

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星のあなた-1

洗濯機がこわれた音がする。 下着を数枚洗いたかっただけなのに、下からジョワジョワと水を漏らし、そのまま眠るように稼働を止めた。 私はその場にへたり込んでしまう。 俯くと、視界に入ってくるもの全てが汚かった。髪の毛が散乱する床。脱衣所の角に生えているカビ。ファンデーションで肌色に変色した壁のクロス。 私は掃除もろくにできない。水浸しの床の上でただ、子供のように声を上げて泣くことしか。 ✴︎ ひとしきり泣いた後に、Googleマップでコインランドリーの場所を調べる。いくら情緒が壊れていたとしても、泣くだけでは何も解決しないことは体に染み付いている。 この町に住んで3年は経つけれど、徒歩5分の場所にあることを初めて知る。この距離ならまだ外に出る怖さは半減ですみそうだ。 Tシャツにジーンズの短パン、上からカーディガンを羽織る。化粧はアイブローとリップのみ。24時間営業に肖って、夜中1時の外出。日焼け止めは割愛した。 色付きビニール袋に洗濯ネットに入れた下着とその他諸々を突っ込んで、何日かぶりに玄関扉を押し開く。 引きこもっていた間に世間は梅雨明けしたというニュースを見た。でも、外に出てみると湿度が肌に吸い付いてきて不快感が募る。 それでも、このくらいは我慢する。清潔さは精神衛生に直結するから。私には自分を散々甘やかした日々がある。大丈夫。我慢できる。 眩しすぎる蛍光灯の下を、道にはみ出した柿の木の葉を避けながら歩く。人の姿はない、殺風景な真夜中の住宅街。 外は凪が広がっていた。 どうしてだろう、ひとり暮らしの家の中はなぜか騒がしいと感じていて。いつも休まらなくて、時折り聞こえる車の音にさえも威圧されていた。 空気を肺に取り込むと、体の内側がすっきり整頓された気がする。私の足取りはほんの少し軽くなっていた。
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