当事者への説明は当然必要ですので。

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 精一杯言葉を選んだが、多少の呆れに近い気持ちが滲んでしまったのは致し方ないだろう。あまりにも――あまりにも、葉月は許容しすぎているようにエリシュカには映った。 「……んー。自分ではそういうふうには思わないんですけど。多分、育った環境の違いじゃないですかね。この世界、わたしの育った所より、結構危険なことが多いんだと思うんです。逆に言えば、わたしの世界はすごく平和なんです。平和ボケしてるって言われたりします。だから、実感がないのかも。別に、刃物で刺されそうになったとかでもないですし、死ぬ一歩手前まで行ったとかでもないですし、ただすっごく大きな木に触って、なんかよくわかんない空間に行ったのが、『国の贄』とやらになる『儀式』だっていうのはわかりましたけど、それで身の危険を感じたわけでもないですし」  確かに『儀式』そのもので身の危険を感じることがなかったのはエリシュカにも理解できる。場所は違えど同じ『儀式』を体験したのだから。  それでもやはり、葉月はレーナクロードたちの所業をあまりに簡単に許しすぎているとは思うが。
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