そしてすべては元通り……とはいかないものでして。

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 恋心というほどのものではないが、旅をする前も最中もいろいろとあったのだそうだ。  「ほっとけないなーって思っちゃうとダメなんですよねー。ノア、あれで天然なら末恐ろしいですよ」などと葉月は言っていたが、末も何もノアールは結婚適齢期を迎えている。というかむしろその評価は年下の女の子に向けられていいものではない気がする。  そんなこんなで葉月はこの世界から去って行った。「いい体験でした!」と清々しく言い切って帰って行ったので、ノアールのことはいい思い出にするつもりのようだったが、どうやらそれで済まない人間もいたらしい。  エリシュカも風の噂でしか知らないが、葉月がいなくなってしばらくしてから、『宰相候補の弟が文官を辞め、愛する人と駆け落ちしたらしい』との話が流れてきた。多分いろいろ捻じ曲がってはいるだろうが、多分そういうことなのだろうとエリシュカは思っている。  異世界の人間を召喚できるなら、その逆ができてもおかしくはないのだろう。しかし、しみじみスヴェン・エルニル・ロードは、『初代王の再来』なんて通り名を持つエッドに比肩する規格外の人間だったのだと実感する。
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