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翻って、自分がレーナクロードをどう思っているのかと問われると、未だ結論は出ないというのが正直なところだった。
あんな馬鹿な真似をしたのに見捨てられない程度には情があるのは確かだが、それがレーナクロードが抱くのと同等のものであるとは思えずにいた。
口にはされないが、エリシュカの両親もレーナクロードの両親も、婚約を復活させたいのは見え見えだったりする。
『神託』が下りる前からそういう雰囲気で、そういう流れだったので、想定内ではあるが――まだ『国の贄』の仕組みが完全に破棄されていない以上、万が一はあり得る。
そう言い訳をして問題を先送りにしている自分に気がつきつつも、見ないふりを決め込むくらいは許されるはずだ。
エリシュカだって、全部がうまく行った後のことを考えるほど能天気にはいられなかったのだ。正直、ほぼ確実に二十を越えても生きられる未来に、戸惑っている最中なのだから。
しかし『クソがつくほど真面目なシルヴェストルの若様』は思い込んだら一直線なので、この贈り物攻勢を止めさせるのは骨が折れそうだ。
多分それは幸せな悩みなのだろうと、頭の片隅で思い――エリシュカはそんなことで悩めるような日常を過ごせる幸せを、ひっそりと噛みしめたのだった。
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