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それを受け入れたくはないと思いながら、『託宣』の絶対さを知るが故にエリシュカの負担にならないようにと口を噤む母親たちと、せめても時が来るまではこちらに縛り付けようと足掻く父親たちと、どちらの気持ちもわかるから、ずっと中途半端な立ち位置にいた。
それは多分、エリシュカも同じだったのだろう。いくら父親たちが聞く耳を持たずに婚約話を広めて正式なものにしてしまったとはいえ、撤回する機会が全くなかったわけではない。
それでも婚約が成立し続けていたのは――きっと、父親たちの願いの形を、無下にできなかったからなのだろう。
……だが、それももう、終わったことだ。
或いは、自分が行動を起こした時から終わっていたのかもしれない。
表面上は、――『婚約者』という形は、変わらなかっただけのこと。それだって、先日解消したので『元婚約者』だ。
儚い夢の形で消える婚約も、その片割れの立場も、ぬるま湯のように続く平穏な終わりある日々も。
全てを捨ててしまっても、罪なき異世界の人間を巻き込んででも、可能性に賭けたかった。諦められなかった。
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