【余話/最終話後】久しぶりの再会、あるいは彼の密かな胸の内

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 魔術的な手間はさして変わらないのに直接会いに行かなかったのは、さっさと『国の贄』云々のしがらみから解放されて、普通の、何でもない日常を過ごせばいい、と思っていたからだ。  そんなわけで、久しぶりの顔合わせだったわけだが、感傷やら感動やらはあるはずもなく。思わず口をついて出たのは様変わりしたエリシュカの部屋についてで――その言及について皮肉めいて取られてしまったのは、普段の行い半分、エリシュカ自身の気恥ずかしさ(のようなもの)によるもの半分、といったところだろうか。  花、花、花。  部屋のいたるところに色とりどりの花が飾ってある。エッドの記憶するエリシュカの部屋は、良家の子女の部屋にしては殺風景というか、必要最低限の物しかないというか、つまりは年頃の淑女の部屋とは思えない無味乾燥さだったので、それだけで劇的な変わりようである。  見たところ飾られている花の種類に統一性はないが、派手なものは避けている印象を受けた。贈った当人と、贈られた当人のことを考えれば、確かに派手なものは選ばないだろう、と納得する。
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