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そう、エリシュカの部屋を印象をがらりと変えた原因の花々は、贈り物である。――彼女の元婚約者、レーナクロード・シルヴェストルからの。
ご丁寧に保存の魔術までかけてある花を贈っているらしく、どの花も生き生きと咲いている。だからこそ、こんなふうに部屋を侵食する、と言っても過言ではない域まで来てしまったのだろうが。
「いやぁ、ここまでくると壮観ですねぇ。……嫌味じゃないですよ?」
付け加えた一言に、エリシュカはじろりとエッドをねめつけたが、本当に嫌味ではないことを察したのだろう。何も言わず、溜息をついた。
「溜息なんて、異性に花を贈られた、年頃のオンナノコの反応じゃあなくないですか?」
「わかって言ってるんでしょう。――そういうのじゃ、ないのよ、これは」
もちろんわかって言っている。
よくある異性間の好意を表す手段としての贈り物――傍から見ればそれそのものでしかないのに、エリシュカとレーナクロードの間のこれはそうではない。
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