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目が覚めたら季節が変わっていまして。
エリシュカの考え通り、その話はそれで終わった。そのはずだった。
(……状況を整理しなければ)
全身を包む倦怠感と戦いながら、寝台から身を起こし、エリシュカは思考を働かせる。
窓の外に見える風景は、昨日までは冬のものだった。木々の葉は落ち、色鮮やかな花など望むべくもなく、常緑樹がかろうじて景観を整えていたものの、うら寂しい感じは拭えなかった。
しかし、今エリシュカの目に映るのは、色とりどりの花が咲き乱れ、緑はみずみずしく存在を主張し、春告げの鳥が嬉しげに果実をついばむ、そんな風景である。
一夜にして季節が移り変わった――そんなことがあるわけがないのは言うまでもない。
そして、今なおエリシュカの意識を奪わんとする、この睡魔にしては凶悪な感覚。
エリシュカは、曲がりなりにも良家の子女としてはしたないと自覚しながらも、舌打ちせざるを得なかった。ちなみに曲がりなりにも良家の子女たるエリシュカがそんな所作を知っているのは、平民からの叩き上げの武官であった母親の影響である。
(間違いなく、魔術ね)
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