第2話 恩返し?

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第2話 恩返し?

「あ、あの…本当にありがとう」 とりあえず礼を言ってみる。そりゃ、助けてもらったんだから感謝はしないと。でも、どうしてもそのゴブリンの姿が目に入るたび、私の中で何かが違うって思ってしまう。 「うむ、これでお前は無事だ」 そう言って満足げに頷くゴブリン。身長は私より少し小さめで、灰色の肌に大きな目、尖った耳。どことなく親しみやすい表情をしているのに、どうにもその顔が受け入れがたい。いや、別に嫌いとかじゃないんだけど…ただ、私の夢に出てくる王子様像とは程遠いというか。 「それより、ここってどこなの?」 気を取り直して、今の状況を確認することにした。だって、目覚めたら森の中だし、見たこともない生物に襲われるし、何もかもが意味不明すぎる。 「ここはエルシルの森。異界だ」 「え、異界?」 「そうだ。お前がどうしてここに来たのかはわからぬが、エルシルの森は外の世界とは別の場所だ。だが安心せよ。私がいる限り、お前に危険はない」 いや、そう言われても安心できるわけないでしょ。異界って、もう完全にファンタジーの世界じゃん。これはやっぱり夢?でも頬叩いたときの痛みはリアルだったし… 「それで…どうすれば元の世界に帰れるの?」 とりあえず最も重要な質問を投げかけてみる。早く帰らなきゃ、学校にも行けないし、友達だって心配するだろうし。 「ふむ、それは私にもわからん」 は?そんな簡単に「わからん」とか言わないでよ!いや、まあゴブリンだし、人間の世界のことなんて知るわけないか。 「だが、道はきっとある。私が助けてやる」 そう言い切るゴブリン。うーん、なんだかんだで頼もしいところはあるのかもしれない。見た目はともかく。うん、見た目は本当にともかくとして。 「ありがとう、助かる…けど、どうして私を助けてくれるの?」 一応気になって聞いてみた。だって、理由もなしに助けてくれるなんて普通はないよね? 「それは…運命だ」 「は?」 運命?なんか今、よく分からないこと言ったよね?まさかこのゴブリン、私に運命感じてるとか、そういうこと? 「お前はこの森に現れた時、私にとって特別な存在であると感じた。だから、守らなければならないと思ったのだ」 「いやいやいや、待って。それってどういう意味?」 「つまり…お前が気になるということだ」 「えぇぇぇっ!?ちょっと待って、私ゴブリンに惚れられてるの?」 何その展開、聞いてないんだけど。私はかっこいい王子様が現れて助けてもらって、運命的な恋に落ちるはずだったのに。しかもゴブリンって。 「お前は私に救われた。それは運命の繋がりだ。だから、私と一緒にここで暮らそう」 「いや、無理無理無理!私は元の世界に帰るんだから!」 焦りまくって全力で否定する。こんな異界でゴブリンと暮らすとか、ありえないでしょ!もっとこう、現実的に考えてよ! 「だが、私にはお前を守る義務がある。お前は私に感謝していると言った。それはすなわち、お前も私に惹かれているということではないのか?」 「えっ?違う違う、助けてくれたことには感謝してるけど、惹かれるとかそういうんじゃなくて…」 もう、どう説明したらいいのかわからない。この状況、誰か助けて! 「ならば、これからもお前を守っていこう。そうすれば、いずれお前も私に心を開くはずだ」 「いや、そういう問題じゃないんだってば!」 必死で説得しようとするけど、ゴブリンはまったく聞く耳を持っていない様子。どうしてこうなったの?なんで私、こんな異界でゴブリンに求愛されてるの? 「さあ、これからも危険な目に遭うかもしれん。私が常にそばにいよう」 そう言って、ゴブリンは勝手についてきてしまう。ああ、もうどうすればいいの?早くこの世界から帰りたい。 そう思いながらも、またしても襲ってくる謎の生物を、ゴブリンが鮮やかに倒してくれる。何度も助けられるうちに、感謝の気持ちは増していく。でも、それと恋は別だって! 「助けてくれるのは本当にありがたいけど、私が求めてるのは…もっと違うタイプの人なの!」 言い訳するように叫んでみるけど、ゴブリンは笑顔を崩さない。 「お前がそう思うのは今だけだ。いずれお前も私の心を理解するだろう」 「絶対にない!」 そう、絶対にないって。私は帰るんだ、この異界じゃなくて、普通の世界に!でも、どうやって? ゴブリンの求愛攻撃をかわしながら、元の世界に戻る方法を必死に考える私。だけど、今のところ手がかりはゼロ。どうにかして、この異界から抜け出さなきゃ。 次こそ、出口を見つけてやる!
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