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「……どうして、こんな事をするんですか? どうして、そんな酷い事を言うんですか?」
正直、田所さんは何を考えているのかよく分からない。
もしかしたら本当に私を思っての言葉なのかもしれないし、彼のご両親に言われてとにかく私と竜之介くんを引き離したいだけなのかもしれない。
いずれにしても、こんな風に無理矢理キスをしたり、一方的な意見や想いを押しつけられては困るし、悲しくなるし、怒りもある。
睨み付けるように彼へ視線を向けると、小さく息を吐いた田所さんは私から離れ、まるで何事も無かったかのように荷物を纏め始めた。
そして、
「申し訳ありませんが、先程の事を謝罪する気はありません。私は貴方を思ってお話をさせて頂き、心から貴方の助けになりたいと思ったから想いを伝えたまでの事。分かって頂けなくて残念です――ですが、戸惑うのも無理はないでしょうから、ひとまず今日のところは、これで失礼致しますね」
そんな言葉を残して、彼は部屋を出て行った。
「……何なのよ、本当に……」
やっぱり、彼の事は理解出来ない。
それに去り際のあの台詞、あれは本心なのだろうか。
何にしても、この先どうなろうと私は竜之介くん以外の人と一緒になるつもりはない。
彼の言っていた、生活の全てを名雪家が保証するという話も受けるつもりは無い。
そもそも竜之介くんを頼ったのだって、好きになったのだって、誰でも良かった訳じゃないし、お金の為でも無い。
竜之介くんだから、彼を心から愛したからこそ頼りたいと思えたし、彼に全てを捧げられた。
だから、彼以外を頼る事も、好きになる事も、今の私には考えられないの。
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