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「一樹が、そんな事を……。確かに、親父たちに同居の事をよく思われて無かったのは事実なんだけど、この前改めて話をして交際を始めた事を告げたら、それについては好きにしていいって言われた。だから問題無いんだ。一樹がそんな事を思っていたのは俺も知らなかった……知らずに頼って亜子さんの助けになればと思って色々頼んでいたけど……それが亜子さんを苦しめる事になってたなんて……本当にごめん」
「ううん、謝らないで。竜之介くんが悪い訳じゃない……そもそも誰も悪くは無いのよ。私たちの事を反対する人がいても、不思議じゃないの。ご両親だって田所さんだって竜之介くんを大切に思うからこそ、私みたいなバツイチ子持ちと親密な関係にあるって聞いたら、難色を示すのは当たり前なのよ。それは仕方が無いって覚悟していたから」
「亜子さん……」
「でも、もう悩むのは止める。誰に何を言われても、私は竜之介くんを信じるよ」
「うん、そうして。何かあったらすぐに話して。一人で悩まないでね」
「うん」
顔を見合せ、少しずつ、距離が縮まる。
その時ふと、昼間の出来事がフラッシュバックする。
「――ッ」
「亜子さん?」
「…………竜之介くん、ごめんなさい……」
「何? どうして謝るの?」
そう、私には、まだ言えていない事があったのだ。
寧ろ一番に話して謝罪すべき事が。
「……その、今日も竜之介くんと別れるように田所さんに言われて……その時に、それを拒んだら彼が…………」
何て話せばいいのか、それを聞いたら竜之介くんがどう思うのか色々考えると話せなくて言い淀む。
「もしかして、一樹が……アイツが何かしたの?」
そんな私を見て何かを察した竜之介くんは再び怒りを露わにしながら聞いてきた。
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