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 予想通り、あの日以降正人は定期的に私と凜の前に姿を現すようになって、私は困り果てていた。  ある時は私の職場でもある弁当屋に現れ、ある時は凜の通う保育園の周辺で待ち伏せ。  正人に付き纏われているせいで自宅までタクシーでの移動を余儀なくされて、金銭的にも精神的にも困っていた。  そんなある日の週末、 「正人……もういい加減にしてよ……」  懲りずにアパートを訪れた正人。  初めはドア越しに会話をしていたものの諦める気配が無いのでドアを開けて応対するも、部屋にだけは入れたくなくて諦めて貰えるまでとことん話し合うつもりでいたのだけど、 「またお前かよ、懲りねぇな。知り合いに警官いるから呼ぶぞ?」  休日で仕事が休みだったのだろう、隣人の鮫島さんが上下スエットというラフな格好で外へ出て来ると、正人を見るなり溜め息を吐きながら知り合いの警官を呼ぶと言い出した。  彼の手にスマホが握られていて、何やら操作しだしたのを見た正人はハッタリではなく本当に警察を呼ばれると思ったのか、 「分かったよ! 帰ればいいんだろ!?」  慌てて階段を駆け下りてアパートから離れていった。  そんな正人の姿を見送った鮫島さんはふぅっと息を吐き出すとズボンのポケットにスマホをしまい、 「あのさ、あの男に付き纏われてんだよね?」 「……はい」 「余計なお世話かもしれないけど、警察に相談した方がいいんじゃねぇの?」  私と正人の事情を訊いてきた上で、警察に相談してみてはと提案してくれる。  確かに彼の言う通り警察に相談するのは一つの手だと思うけど、警察はこれくらいの事じゃ動いてくれない事を私は知っている。 「付き纏われてるだけで、それ以外に被害が出ている訳じゃないから、警察は動いてくれないと思います。すみません、二度もご迷惑をお掛けして。ありがとうございました」  凜は今眠っているので起きる前に部屋へ戻ろうと鮫島さんにお礼と謝罪の言葉を口にして部屋へ入ろうとすると、 「あのさ――俺で良ければ力になるよ? お節介かもしれないけど、女一人で子供守りながらじゃ不安だろうし、隣に住んでて何かあればすぐに駆け付けられるから、警察が無理なら俺を頼ってよ」  腕を掴まれ、真っ直ぐな瞳に見つめられながら、頼ってと言われた私は困惑した。
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