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「うわー! おもちゃいっぱい!!」  大型ショッピングモールに辿り着いた私たちは、凜の機嫌を損ねないように玩具売り場から見て回る事に。  沢山の玩具が並んでいる光景を目の当たりにした凜は瞳を輝かせながらお気に入りの玩具を見つけては『これ欲しい』とおねだりしてくる。 「こっちの恐竜の人形は似たようなのが家にあるよ? こっちのロボットの人形の方がいいんじゃないかな?」 「これもほしい!」 「どっちもは駄目だよ。どっちか一つね」  悩みに悩んで二つまで絞ったものの、どちらもどうしても欲しいようで、そこから選べない凜。  普段あまり玩具を買う事も無いから買ってあげたい気持ちはあるけど、この後子供服や日用品なんかも見ていきたいし、それを考えると持ち合わせが足りなくなるから両方は買ってあげられなくて、何とかどちらかを選ぶように促すと、 「亜子さん、凜、どうしても両方欲しいみたいだし、一つは亜子さん、もう一つは俺が買うって事で、両方買おう。ね?」  今の今まで黙って見守ってくれていた竜之介くんが、そう提案してくれた。 「……でも……」 「いいじゃん、沢山ある中から二つまで絞れたんだし、この二つはどうしても欲しいんだろうからさ」  私たちが話していると、凜が不安そうな表情で見上げてくる。 「……どっちも、いい?」 「分かった、それじゃあ、今回は特別ね。一つはママが、もう一つは竜之介くんが買ってくれるって。お礼言ってね?」  我ながら甘いなと思う。それに、竜之介くんには本当に感謝してもし切れない。 「おにーちゃん、ありがと!」 「どういたしまして。それじゃあレジに持って行くか」 「うん!」  こうして欲しかった玩具を買って貰えた凜は満足したのか、玩具売り場を出てキャラクターの付いたショッピングカートを見つけると、自ら乗りたいと言ってカートに座ってくれる。  いつもは動き回りたい為にカートに乗るのを嫌がる事が多いのだけど、キャラクターが付いているのと欲しかった玩具が手に入ってご機嫌なようで、大人しく座って手に持って遊んでいた。
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