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「凜、とりあえずお家に入ろ?」 「やだ」 「凜の好きなハンバーグ作ってあげるから。ね?」 「やーだ! むしとりするっていうまでここにいる!」  最早私が折れるしか無い状況に追い込まれていると、 「虫取り、俺が一緒に行ってやろうか?」  丁度帰宅して来た鮫島さんがそう声を掛けてきてくれた。 「鮫島さん……そんなのいいです、申し訳ないですから……」  有難いけど、流石に頼める訳も無くて断ろうとしているところに、 「おにーちゃん、むしとりしてくれるの?」 「ああ、いいぜ」 「ほんと!? わーい!!」  人見知りで普段は自分から大人に話し掛ける事なんてしない凜が、自ら話し掛けていて思わず驚いてしまう。 「す、すみません! あの、本当に大丈夫ですから気にしないでください!」  凜には悪いけど、やっぱりこんな事をお願いするのは忍びない私は無かった事にしようとするも、 「遠慮しなくていいよ。虫、苦手なんでしょ? こういうのは男に任せとけばいいんだよ。凜だってせっかくその気になってんだし、遠慮するなよ」  鮫島さんの言う通り、すっかりその気になっている凜を前にすると、とてもじゃないけど諦めさせるなんて無理で…… 「……すみません、それじゃあお言葉に甘えて、よろしくお願いします」  凜の為だと割り切った私は、今回だけ、鮫島さんに頼る事を決めた。
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