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俺は美紀さんの家に入ると満面の笑顔で話しかけた。
「ただいま!」
美紀さんが俺の姿を見て怯えていた。
「誰ですか、あなた? 勝手に家に入ってこないでください。それにここはあなたの家ではありません」
俺はポケットから美紀さんの財布を取り出して渡した。美紀さんは財布を落としたことに漸く気づいたようで狼狽えていた。
「財布を届けてくれてありがとうございます。でも住所を知ってるなんて、中身を見たんですか?」
俺は怯える美紀さんに笑顔で話しかけた。
「保険証が入っていたので住所も生年月日もわかりました。美紀さんに届けることができて良かったです」
「届けてくれたのはありがたいですが、警察に届けずに家まで来ると、ちょっと怖いです。いえ、やっぱり、かなり怖いです」
「俺は美紀さんと結婚してこの家に住むんだから、予行演習でただいまと言ったんだよ」
「なんで私があなたと結婚しないといけないのですか?」
俺は美紀さんを安心させようとゆっくり話した。
「実は俺は美紀さんのストーカーなんです。美紀さんに恩を売りたくて、いつも何か落とさないかなと跡をつけていました。そうしたら、今日は運良く財布を落としてくれた。だから、こうやって届けに来たんです。いや今日はついてる日ですね。早く結婚しましょう!」
美紀さんが携帯を手に取って、震える声で何やら喋っていた。
「もしもし、警察ですか? 目の前に不審者がいます。私のストーカーと名乗る男です。住所を今から伝えるので、すぐに逮捕してください」
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