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「初めてにしては、綺麗に着付け出来るもんだな」 「最近はこういう動画があって助かりますよね」  響騎さんはグレーの生地に銀のラインが入った浴衣と黒い帯、私は白地に藍色の花柄が印象的な浴衣に濃紺の帯を締め、二人で選んだ物をようやく着ることが出来た。 「髪はどうするんだ」 「お団子にします。さっき動画を見つけたんで、うまく出来るか分かんないですけど、洗面所で支度してきますね」  響騎さんを置いてバスルームに向かうと、広い洗面台の鏡にスマホを立て掛け、とりあえず先にメイクを済ませてしまう。そして早速動画を見ながら髪をアップにまとめていく。  編み込みに苦戦しつつ、なんとか動画の通りに仕上げた髪に用意しておいた大振りな花の(かんざし)をつけ、粗が目立たないように誤魔化してみる。 「響騎さん、後ろから見て変じゃないですか」  部屋に戻って後ろをチェックしてもらうと、器用な手先が簪を差し直して位置を整えてくれる。 「うん、良くなった。こんなに可愛いのに色っぽいなんて反則だろ」 「また。なに言ってるんですか」 「褒めてんだよ」 「はいはい。バカなこと言ってないで、そろそろ出ないとですよ」 「バカなことって。まあいい、忘れ物ないか? スマホちゃんと持っとけよ」  貴重品を入れた巾着袋を手に持って下駄を履き、響騎さんと一緒に部屋を出る。 「観覧チケット、ちゃんと手配出来て良かったですね」 「それだけ観光客も多いってことだろうな」  ホテルを出て手を繋いで歩くと、駅前を過ぎた辺りから、花火大会の会場に向かう人たちで通りが混雑してくる。
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