972人が本棚に入れています
本棚に追加
「初めてにしては、綺麗に着付け出来るもんだな」
「最近はこういう動画があって助かりますよね」
響騎さんはグレーの生地に銀のラインが入った浴衣と黒い帯、私は白地に藍色の花柄が印象的な浴衣に濃紺の帯を締め、二人で選んだ物をようやく着ることが出来た。
「髪はどうするんだ」
「お団子にします。さっき動画を見つけたんで、うまく出来るか分かんないですけど、洗面所で支度してきますね」
響騎さんを置いてバスルームに向かうと、広い洗面台の鏡にスマホを立て掛け、とりあえず先にメイクを済ませてしまう。そして早速動画を見ながら髪をアップにまとめていく。
編み込みに苦戦しつつ、なんとか動画の通りに仕上げた髪に用意しておいた大振りな花の簪をつけ、粗が目立たないように誤魔化してみる。
「響騎さん、後ろから見て変じゃないですか」
部屋に戻って後ろをチェックしてもらうと、器用な手先が簪を差し直して位置を整えてくれる。
「うん、良くなった。こんなに可愛いのに色っぽいなんて反則だろ」
「また。なに言ってるんですか」
「褒めてんだよ」
「はいはい。バカなこと言ってないで、そろそろ出ないとですよ」
「バカなことって。まあいい、忘れ物ないか? スマホちゃんと持っとけよ」
貴重品を入れた巾着袋を手に持って下駄を履き、響騎さんと一緒に部屋を出る。
「観覧チケット、ちゃんと手配出来て良かったですね」
「それだけ観光客も多いってことだろうな」
ホテルを出て手を繋いで歩くと、駅前を過ぎた辺りから、花火大会の会場に向かう人たちで通りが混雑してくる。
最初のコメントを投稿しよう!