1人が本棚に入れています
本棚に追加
ただいまといえる世界
山田は高校の時に友人である谷口と柿沼にダンスに誘われ、その世界の面白さを知った。
しかし、自分は井の中の蛙だと思い知り、卒業と同時に彼らとは疎遠になる。
数年後の仕事帰りに、たまたまダンスをしていた谷口と柿沼を見つけて、あの頃と変わらず楽しそうに踊る2人を目にして自分はやはりダンスをしたいんだと再認識した。
2人の説得もあり、無理だと恐れていた殻を破り、山田は一歩を踏み出す。
これは彼が友人と共に再びダンスでトップを目指す物語。
***
「よし!んじゃこのままリーダー達のとこ行こ」
柿沼がそう言い立ち上がる。谷口もそれに習い、更に山田が逃げないように片腕を掴んだままだった。流れが読めない山田は困惑気味に「ええと……」と声を漏らす。
「今から?」
「そそ!善は急げって言うし?このまま一旦帰ったら山は気が変わりそうだし」
「ぐるぐるまたくだらない事で悩んで、やっぱり無理とか言い出しそうだしな」
柿沼と谷口は友人だからか山田の性格をよく理解していた。当たっているものだから山田も言い返せない。
「まあ、でも」
「ん?」
「山なら絶対大丈夫だし。てか、踊る以外の選択肢、山にはないよ。踊ってる山は最高にかっこいいもん」
「え」
「ま、とりあえず行ってみようぜ。な?山」
「……うん」
山田は背中を押してくれる2人の優しさに泣きそうになったが、ここで泣くのは違うと思い堪えた。2人の後を着いて行きながら、山田は考える。自分は本当にこの2人に助けられてばかりだ、と。
柿沼たちが先程踊っていた場所まで戻ると、既に片付けが終わっており男性が2人その場に立っていた。2人は柿沼たちに気づくと顔を上げる。そんな2人に柿沼が片手を上げた。
「ただいまー」
「おう。緊急時の用事は済んだのか?」
「もうバッチリ」
「片付け悪かったな」
最初のコメントを投稿しよう!