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その言葉に街位は一瞬驚いた後、小さくニヤッとし……
「やってみな」
そう声をかけた。
***
再び5人がスタジオに集まる。しかし、今回は以前のようにギスギスした雰囲気はない。山田は真剣に、そして自信に満ちた表情を浮かべていた。それを見た街位もどこか面白そうにしている。そんな2人の様子を3人は少し離れたところから見ていた。
「山、大丈夫かな?」
「大丈夫だろ」
柿沼と谷口2人の会話を聞きながら、北海はクスリと笑う。
「ま、目の色が違うし。いいようになるでしょ」
北海の言う通り、山田はこの前とは違った。それは音楽が鳴り出せば一目瞭然。恥も何もかも全て捨てて、今度は踊ることだけに集中した。ブランクはあれど本来の実力をだして山田は踊り切る。
「はぁっ……はっ……」
シーンとするスタジオ。山田は不安そうに4人を見つめる。
「あの、ダメ……でしたか?」
しかし、街位は無表情で山田を見つめる。そして一言……
「合格」
それだけ答えた。その言葉に山田の頬が赤く染まる。それは嬉しいからなのかそれとも別の理由か……いや、きっと両方だろう。そんな山田を見て街位もどこか嬉しそうだった。それを見た3人もまた笑顔になる。
「今日からここがお前の居場所だ」
街位にそう言われて山田は胸が熱くなる。やっと、この場所に入れることに認められた自身に高揚感が湧き上がる。そして、同時にこれから起こるであろう出来事にワクワクした気持ちが高まった。
「あの……皆さん」
山田は意を決して柿沼、谷口、北海の3人を見る。すると彼らは優しく微笑んだ。それに安心して山田はゆっくりと口を開く。
「僕はまだまだ未熟ですが……その、これからもよろしくお願いします!」
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