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街位がストップをかけたのだ。山田は恐る恐る街位へと顔を向ける。その表情は冷たく、山田は絶望で打ちひしがれた。
「こんなんじゃ、無理だな」
「あ、あの」
「やめだ。山田、お前にはダンスを踊る資格はない。少なくとも、俺はおまえとはやりたくない。他を当たるんだな」
「いや、リーダー。山もほら、久々だしさ」
「そうだぜ、あいつの実力はまだまだこんなんじゃねぇよ」
柿沼や谷口がフォローするが、街位は聞く耳ももたない。
「中途半端な奴はいらない」
街位はそう言い残してその場を後にした。残された4人はどうしていいのかわからず呆然としていたが、北海が山田に歩み寄る。
「ごめんね、山……街位も悪気があって言ってるわけじゃないんだ。でもさ?今無理してやる必要はないからね。いつでも声かけてよ」
「……はい……」
北海に優しく諭され、山田は自分が恥ずかしくなった。真剣に取り組めば、恥ずかしいなんて思う暇もなかったはず。
技術じゃない、心のだらしなさにリーダーは呆れたのだと。
「山、大丈夫か?」
山田は柿沼の言葉に小さく頷いたが、その心は重く暗いものだった。
***
それから数日、山田は1人考えていた。街位に言われた言葉が頭から離れず、ダンスに対する自信がなくなってしまったのだ。そんな自分が彼らと踊るなどおこがましいとさえ思い始めるほどに。
そんな時、山田のスマホが鳴った。画面を見れば谷口からの着信で、出ようかどうか迷っていると「おい」と背後から声をかけられる。驚いて振り向くとそこには街位が仏頂面で立っていた。
「あ、街位さん……」
「お前、あの後どうなった?」
急に現れた彼に山田は言葉が詰まる。しかし反対に街位本人はあまり気にしていない様子だった。その問いに山田は気まずそうにするしかできなかった。そんな山田を気にするでもなく街位は更に続ける。
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