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「一回ダメになったら、もうそこで終わり?お前のダンスへの熱意ってそんなもん?」
「っ……僕はっ……」
「お遊びなら他当たってくれよ」
その言葉に山田は目を見開く。そうじゃない。そんなわけない。そんな簡単に捨てれるようなものじゃないと。しかしそれを言葉として伝える自信がなかった。
「なぁ、山田」
黙り込む山田に街位が問いかける。その声にハッと顔を上げると街位は少しだけ微笑んでいた。その笑みの意味がわからず、山田は首を傾げるしかない。
「お前、ダンス好きか?」
「……はい……」
そんなの当たり前だと山田は答える。だが、街位はその答えに納得しないようだった。
「本当に?」
「え……?」
「本当に好きなのか?」
その言葉は何かを引き出そうとしていて、山田はジッと見つめてくる街位の視線から、逸らしたくなる気持ちを抑える。
今ここで、またあの日と同じような流れになるのは避けたい。
ならばと、山田は自分の中の想いをゆっくりと言葉にする。
伝わるように、届くように。
「僕は、その……好きです。ダンスが……けど、それは1人でやるんじゃ意味がなくて。僕は、柿沼くんや、谷ちゃんと……あなた達の隣で踊りたいんです。一緒に」
そう言って、街位を見据える山田の目にもう迷いはなかった。その答えに満足したのか街位は「やっぱり、可愛いくらい真面目だな」と小さく呟くと、そのまま背を向けて歩き出した。
可愛い真面目という言葉に山田は首を傾げる。以前泊まった時にそんなことを言っていたような気がすると思ったが、今はそれどころではない。去り行く街位を追いかける。
「あ!あの!」
思わず呼び止めてしまったが、何を言えばいいのかわからない。それでもこのまま別れてしまうのは嫌だと思った山田は必死に言葉を探した。そして……
「もう一度!僕にチャンスをください!」
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