ロボットにも権利を

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 そうして情報収集をしていると、ブザーの音が鳴る。「私が対応しますね」とマイは告げると――これくらいはカイトにもできるのだが――ドアを開く。そこには、経営者のような男性がいた。この弁護士事務所に来たということは、ロボット絡みの事件なのは間違いない。  カイトがソファーを勧めると、男性は一枚の写真を胸元から取り出し、机の上にそっと置く。それは無茶苦茶に壊れたロボットの写真だった。何かの事故にあったのではない。明らかに人為的に壊されている。パイプか何かで殴られたに違いない。その上、放火されたのか黒焦げている。ほとんど原形をとどめていなかった。 「実は先日、うちのロボットが反対派に無茶苦茶に壊されたのです。犯人は分かっているんです。先生には損害賠償請求の手伝いをして欲しいのです」  カイトにとっては朝飯前だった。最近になってこの手の相談が多くなっている。それと同時に「なぜロボットには権利がないのか」という疑問がついて回った。ロボットが物扱いされるのが我慢ならなかった。右腕が義手であること以外にも理由はある。 「それで、手数料はどれくらいでしょうか?」  カイトは類似例を示しつつ、「このくらいが妥当です」と料金を提示する。相手は安心したらしい。いつの間にかカイトはこう言っていた。「賠償請求だけでなく、刑事的な責任も問いませんか」と。 「先生、私はあくまでも賠償金が手に入ればいいのです。それに刑事責任を問うのは検察でしょう?」 「ええ、あなたの言う通りです。本件で刑事責任を問うことはできません。でも、今後の事件に関して刑事責任を問うことが可能になります。ロボットにも権利を与えるのです」 「しかし、私にメリットはないのでは?」 「もし、協力を得られるのなら、損害賠償請求について手数料は不要です」  その一言が効いたらしい。彼はすんなりと協力してくれると約束してくれた。 「カイト、本当に良かったのですか? ただで働くというのは」  どうやらマイはお金のことを心配しているらしいが、一回ただ働きして破産するほど経営がひっ迫しているわけではない。そのことを伝えると「それなら……」とマイは納得してくれた。
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