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どうすれば、別れずにすんだかわからない。何回も何回も頭の中で別れずにすむ方法を模索した。しかし、何回辿っても、啓から別れを切り出される未来しか見えなかった。
ずっと一緒にいたかった。
優しくされるのが嬉しかった。手をつなぐのが好きだった。啓は照れていたのか「やだよ」と言って手をすぐほどいていた。
そんなたわいないやりとりすら満ち足りていた。
可愛くない。と啓は言った。
きっとそうなんだろう。自分勝手で、啓が望むことを私はしてあげられなかったのだろう。よくわからないけれど。
時間が経てば立つほど、どんよりとしたものは大きくなり、その黒いものに私は支配されていった。
ダイエットをしていたときはあんなに食べたくて仕方がなかった甘いものを一切受け付けなくなった。辛うじて、ご飯は食べられる。でも食べていると喉がつまるような感覚があり、箸で切り分けながら歯が生え始めた赤ちゃんのご飯並の少量を、ちまちまと食べた。
ふとした時間に啓を想ってしまう。
そもそも大学がおなじなのだ。授業が被っていることもあるし、学食で見かけることもある。
いつだって目が啓を探していた。
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