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手紙
家に帰ると化粧も落とさずベッドに倒れ込んだ。
バイトはすぐに馴染めそうだ。労働は辛くない。でもあの日からずっと吐き気が止まらない。
啓に会いたい。
いや、会っても気まずいだけだ。
また傷つくだけだ。
遠距離で自然消滅、とかならともかく、性格などの衝突で別れに至ったのだから、やり直すなんてできるわけがない。
どんなに想っていても、相手にそれが伝わらないと意味がない。
枕にファンデーションがついたら嫌だと思いながらも、顔を埋めた。いまはもう目を閉じていたい。考えたくない。
苦しい。
何が。
よくわからない。
ただ別れたというだけ。
ありがちなメロドラマ。
なんの物語性もないつまらないやりとり。世界中でこんなことはありふれている、けれどだからこそ今の私に共感してくれる人は多いと想う。
何に苦しいんだろう。
生活の一部であった存在がいなくなったこと。
笑いながらたわいない話をする時間がなくなったこと。
昔飼っていたインコが逃げてしまったときも悲しくてずっと泣いていた。
喪失感。他に例える言葉はあるだろうか。
それを大事に想っていたからこそ、心がえぐられる。
私を愛してくれる人がいなくなったこと。
ただただ吐きそう。やはり深夜にラーメンは重すぎた。油で気持ちが悪い。
せり上がってくる胃液が苦い。
耐えきれずに立ち上がってトイレに向かった。
愛奈と一緒なら食事ができるが、ひとりだと食べられない。
せっかく食べたものも結局は吐き出してしまう。
胃がそのまま口から出てきそうだ。吐き出すだけ吐き出しても、何ももうでないというのに吐き出すという行為だけを続ける。
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