手紙

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便座を抱きかかえ、顔を伏せる。 屈辱的だ。    ああ、もう全てを吐き出したい。  胃も、肺も、心臓も。  なんで私は生きているのだろう。  はやく終わらせたい。  啓だけが人生ではない。そう知っている。  でも、もう全てが嫌だ。  死にたい。  そう思ったとき、玄関口から音が聞こえた。  ドアポストに郵便が届いたようだった。  嘔吐いて苦しい中、そんなに小さな音がよく聞こえたものだ。  急いで駆け込んだこともあり、トイレのドアは薄く開いていた。私の住む家は学生向けアパートの1Kで、トイレは玄関入ってすぐにある。  もしかして、外にまで私のもがく声は聞こえていないかと少し不安になった。  洗面所で口をゆすぎ、郵便物を確認した。  宛名のない封筒。少し厚みがあり、手紙のほかに何か入っているようだ。  不安に思いながらも、開けてみた。そして、開けてから後悔をした。もし私宛でないものだったらほかの住人とのトラブルになりかねないのではないか。開けずに大家さんに渡すべきだったか。  しかし封を切ってしまった。  宛名がないのだから中身を確認しないことには何もわからない。そう思い直して中身の手紙を開いた。
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