No.4

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 僕は高校生の男子。唯一の趣味がカードゲームのカード収集。特に「モンスターバスター」シリーズに関しては一目置かれている。カードはほぼほぼコンプリートしていて、後はNo.4のカードだけだ。しかしこのNo.4のカードは出ない。何パック買っても出ない。ネットの情報もない。友達のいない僕は、休み時間はひとりでボーっとしている。すると後ろの方から面白そうな話が聞こえてきた。「モンスターバスター」のNo.4のカードについてだ。少し太ったオタク丸出しの男、宮前が小声で「俺、No.4のカード、持ってるんだ」と言った。まわりからは「スゲーじゃん」とか「全然情報ないのに」と称賛されている。耳をダンボにして聞いていると「持ってるの?」とか「見せてよ」という話になっていた。カードを見せる宮前。僕は見たかったが知らないフリをしていた。「これがNo.4のカードか」「かっこいいね」との声が聞こえてくる。宮前は得意げだ。学校が終わり、宮前は先ほどのオタク仲間と学校を出た。僕はこっそり後をつけた。10分ほど歩いて、宮前はひとりになった。僕は宮前に「No.4のカード持ってるんだって?」といきなり話しかけた。宮前は怪訝そうな顔で僕を見る。「何?」「いや、モンスターバスター、僕も集めてて、No.4のカードだけ、どうしても出ないんだ。頼むよ一目だけ見せてくれよ?」「嫌だよ。何で君に見せなきゃいけないんだよ」「何でだよ。いいじゃないか。少しくらい」僕と宮前は揉み合いになった。その拍子に宮前は頭を石垣にぶつけた。そして倒れて更に頭をぶつけた。頭からは血が出ている。僕は宮前のバッグを漁った。小物入れ的なところに例のカードが入っていた。僕はそのカードを手に取り、その場を去った。大丈夫、誰にも見られてないはずだ。人通りの少ない田舎の細い道だ。この先家もほとんどない。僕は家まで全速力で走った。家に帰り、自分の部屋に入ってようやくひと息ついた。例のカードを見てみる。キラキラとした竜のカードだ。僕だけの世界で1枚のカードだ。僕はふとスマホでググったみた。そこには今までにない情報が追加されていた。何でもNo.4のカードはそもそも存在しないのでは、と思ったユーザーがカード会社に問い合わせした記事が載っていた。その記事を読むと、カード会社ははっきりとは言わなかったが、存在しないことをほのめかしていた。僕は頭を抱えた。
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