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第0章 序章。
西暦2024年09月25日〈水曜日〉
ここは京都府にある古本屋。
深山美世は、
多分日本でそれなりに言いにくい自分の名前を客に紹介していました。
深山美世「向山志穂?
私の名前ではありませんよ?」
深山美世を悩ませるのは…
88歳の穏やかで優しい淑女でした。
坂本和美「あら?孫娘が息子と折り合いが悪くて駆け落ち同然で出て行ったのだけれど…貴女は私の孫娘じゃないの?」
この日はこの台詞を10回以上聞いた深山美世がついついため息をついてしまいそうになりながらも…
深山美世「私は向山志穂ではなく、
深山美世です。」
と、言う事で美世が口にするこの台詞も10回以上繰り返している台詞でしたが漸く孫娘ではないと理解したその淑女は…
坂本和美「宮間美櫻?宮の間と書いて宮間だなんて…御先祖は神主さん?そして桜の季節にでもお生まれになったのかしら?」
美世の先祖は…
神主でもなく京で朝廷に仕えながら生きていた公家の末裔でした。
深山美世「…深山、深い山で美世は美しい世の中と書きます。」
漸く理解された頃には、
秋深まる京の町は日暮れを迎えておりました。
坂本和美「美世さん、良い名前ね…
孫娘に良く似た女性に出逢えて私は幸せね…。孫娘と息子が仲直りするまで私は生きる事にするわ…」
しかし…
朝の9時に古本屋が開店してから、
16時30分になるまで…理解して貰うのにかなりの時間を割いた事で美世は、心身共に疲れ果ててしまいました。
そんな時、
美世『私の人生は幸せなのかな?』
孫娘である向山志穂が好きだった恋愛ファンタジー小説を大事そうに抱えて家路を急ぐ淑女を見つめていた美世は心の中で呟きました。
だけど…
美世は淑女が発したこの言葉で
心を救われた気持ちがしました。
その言葉は…
坂本和美「美世さん、私は志穂と私を繋いでくれる運命の一冊を見つける事が出来ました。貴女にもきっとありますよ?そんな一冊が…」
美世は34歳ではありますが、
まだ恋を知りませんでした。
深山美世「私は身も心も焦がすような恋がしたいです。」
美世は心の中にある願望を口にしてから古本がたくさんある棚の整理をする事にしました。
すると…
美世「古の歴史を記す物語?」
美世が仕入れた覚えのない本が、
棚にある事に気づいたのです。
その本は、
秦の始皇帝が生きた春秋戦国時代について描かれた物語でした。
美世「王賁?」
王賁…秦の始皇帝に仕えていた王翦の息子で王離の父親でもありました。秦が天下統一をする事が出来たのは王翦、王賁、王離、それに…王騎が存在したからでございました。
時と国を隔てた春秋戦国時代にある秦でも不思議な物語が始まろうとしておりました。
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