第1章 王家の嫡男・王賁。

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第1章 王家の嫡男・王賁。

王賁「…僕はどのように生きるべきなのだろうか?」 ここは、 春秋戦国時代の古代中国にある戦国七雄の1つである秦の王都・咸陽。 時は紀元前228年07月08日。 この日の咸陽は、 悲しみに包まれていました。 それは… 秦王・政〈嬴政〉〈元の名を趙政〉をこの世に産み男達の野望などに翻弄された趙華…字を蘡〈太后〉が病のため身罷(みまか)ったからでした。 しかし… 1度は嬴政と敵対した太后の死などに興味はないと言う事が丸わかりの反応をしている男がおりました。 その男は… 李信「太后が死んだからって俺達のするべき事に変わりはないし…第一、大王様を裏切った女に興味はない…」 李信(りしん)…王賁とは同期で、 出世街道をまっしぐらに進む男だが 女心や繊細な者の考える事が分からずいつも誰かから叱られております。 王賁「少しは空気を読め!太后様が身罷られた事で僕も焦りを覚えてしまったんだ!」 戦の事になると抜群の感性を発揮する男ではありますが人の心まではなかなか分からないようでいつも王賁とはこのような会話をしていました。 すると… 似たような事を言い出す男は、 他にもおりまして… 羌廆「イマイチ言っている事が理解出来ないのだが太后様の死と王賁の憂鬱に何か共通点はあるのか?」 羌廆(きょうかい)…李信、王賁と共に将軍として働く同期ではあるのだがこちらも李信と似たような難点を持っており王賁は頭を抱えていました。 昌平君「直接、我らに太后様の死が関わる事はないが王賁は自分の生きた証が欲しいのではないのか?」 同期の2人は全く王賁の事など分かっていないようですが昌平君にはお見通しのようでございました。 王賁「さすがは…相邦。頼りになります。空気の読めない同期2人とは大違いですね。」 昌平君「…あの2人と一緒にされるのは少し心外ではありますが…。」 秦の相邦(しょうほう)… 皇帝の補佐が相国なら 王の補佐は相邦と呼ばれる地位で 昌平君は昌文君と共にその地位に就き嬴政を補佐しております。 楊端和「羌廆、李信、王賁。 不思議な本の話を王賁の母君から聞いてその本を譲って貰ったんだ!」 楊端和(ようたんわ)…李信達とは同期の将軍ではありますがかなり好奇心が旺盛なところがあり王翦の妻で王賁の母親でもある典佳(のりか)とは好奇心旺盛な者同士気が合いしょっちゅう話し込んでおりました。 ちなみに… 李信「王賁の字は典で母親から一字を貰ったんだろ?違うのか…?」 李信は王賁を揶揄うのが大好きで、 いつも王賁に軽口を言うのですが… 基本的に相手にはされていません。 王賁「僕は、誰か自分より大切に出来る人間を見つけたいと願っている。」 王賁は心の底から溢れ出る気持ちを、何とか言葉にしました。 しかし… 羌廆「それは違うと思う。 武将と所帯を持つならばそれなりの覚悟を持って貰わないと俺らは安心して戦場に向かう事が出来なくなる…」 李信も羌廆の言葉に深く頷き… 李信「それと俺達は秦が他国から攻められた際に国を守る最後の砦にならなければならない…。つまり有事の際は家族よりも秦に住まう民の命を優先しなければならなくなる。」 その次に続く言葉を紡ぎ楊端和もまた李信の言葉に続く言葉を紡ぎました。 楊端和「確かに…有事で国を防衛する時に不安そうな顔で妻子に縋りつかれては…安心して国を守る事が出来なくなってしまうから…2人の言う事は、あながち間違えではないと思うぞ。」 但し… 3人には残念ながらそんな存在となる女性がいない為なのか皆、王賁の言葉の意味を勘違いしていました。 王賁「誰も職務を犠牲にしてまでその女性を守りたいなどとは申しておらぬ。背中を任せられる女性に出逢いたいと言う意味で話しただけなのだが…」 王賁は恋愛の話をするのはあまり得意でないようで耳まで真っ赤にしながら早口言葉のように自らの思いを話すと 楊端和と典佳が話していた運命の一冊となる本をめくったのでございます。 羌廆「大事ないのか?王翦様と典佳様が出逢われたのは単なる偶然で何度も起きないのではないのか?奇跡とはそんなものであろう?」
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