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教師の会話
「あいっつらあぁーっ!!」
授業終了時に生徒たちに提出してもらった作文。読んでいたら、思わず声が出てしまった。
ここは職員室。大きな声を出してしまった私を見て、振り向いた同僚が何人もいる。
「どうしたんですか?」
隣にいるジャージ姿の男性教師が、私に声をかけた。
「これを見てくださいよ! これ!」
私は手にしていた原稿用紙を彼に押し付けた。
「なになに……? 『ぼくを変えた一冊』『わたしを変えた一冊』『おれを変えた一冊』?」
「授業で生徒たちに『自分を変えた一冊』というテーマで書いてもらったんですけど、魔羅に人格が支配されているような、煩悩まみれの文ばかりになりまして……」
「ふむふむ、なるほど……。確かに、思春期真っ盛りという感じですね……」
「私としては、こういう本を読んで、目指したい職業が見つかったとか、そういうことを書いて欲しかったんですけれど……」
「でも、『自分を変えた一冊』というテーマ通りではありますよね」
「はい。ですが……」
確かに、自分を変えた一冊という点では、間違っていない。目覚めた性的嗜好は一生モノだし、それこそ、運命の一冊ともいえるだろう。
けれども、これは教育の一環としてやらせたもの。低俗なことは書いて欲しくなかった。
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