教師の会話

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「中学一年生に崇高なことを求めても仕方ないのでは? 校長先生だって似たようなもんでしょうし」 「えっ? どういうことですか?」 「校則ではポニーテール禁止となっていますよね」 「ええ、それがどうかしましたか?」 「あれ、校長先生がポニーテール好きで、見ると欲情してしまうから、あえて禁止にしたという(うわさ)です。この前、レンタルビデオ店に行った時、校長先生がAVを、それも、ポニーテールの女優が出ているやつを借りているところを見ましたし……」 「そんなことで禁止になったんですか?」 「あくまでも噂ですけどね」  あきれた。彼の言っていることが、本当だとすると、そんなことで禁止するのは、間違っていると思う。なぜなら…… 「そんなことでいちいち禁止にしていますと、みんな、学校に来れなくなりますよ」 「といいますと?」 「生徒たちの作文ですけど、他にも『ファッション雑誌を見て、髪の毛そのものに興奮するようになった』とか『建築物図鑑を読んで、壁にあそこをこすりつけたくなった』とか、他にもいろんな性的嗜好が書かれていたんです! 何とかを見ると欲情するから禁止と言っていると、きりがありません」  Aという人物にとって何でもないものが、Bという人物にとっては性的嗜好の対象になっている場合がある。しかも、性的嗜好は人それぞれで、バリエーション多数。提出してもらった作文を読んで、よくわかった。だから、一人でも性的興奮を覚えるものがあれば禁止ということにしてしまうと、何もできなくなってしまうのだ。 「それもそうですね。この校則、生徒からも保護者からも不評ですし、変えた方がいいかもしれませんね」  生徒の作文に対する愚痴から始まった会話は、いつの間にか、理不尽な校則を変えようという話になっていた。
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