1人が本棚に入れています
本棚に追加
「直樹! 昨日、母親と喧嘩しただろ? だっさー!」
中学校に登校した途端、昔からのツレ二人にヘラヘラと笑われる。
なんだよ? 朝から気分悪りーな。
「んなわけ、ねーだろ!」と強がるが、事実だからこそ胸クソ悪い。
一蹴する俺に差し出されたのは、スマホに映る一画面。
『ただ今、母親と喧嘩している。そんな暇あんのかよ?』
そう書き込まれた文章だった。
「はあー!」
間抜けな声を出した俺は、ポケットよりスマホを出し操作する。
起動したのはSNSアプリで、ツレらに見せられたのはそこで書き込み投稿したと思われる文面だった。
まさかと思い久しぶりにアカウントを開くと、そこには同じ文章が赤裸々に綴られていた。
「嘘だろ! マジか!『なりすまし』?」
苛立ちが頂点になった俺はスマホをぶん投げたい衝動を抑え、冷静に削除する。
このことから、一応はこちらでもコントロール出来るのだと溜息を漏らす。
しっかし、気持ち悪りーな。……当たっているからこそ気味が悪い。
「じゃあ、明日な」
「おう」
授業が終わりツレ二人とチャリ下校するが、こいつらは坂の上部に、俺は下部に帰る為にここで別れる。
この町は海が近く、また日の入りが見えることから、上部から眺める海と沈んでいく夕陽が美しいと地域住民の間で馴染まれており、またそれが綺麗だからこそ。
──くだらね。
チャリ専用の道路を、勢いよく下りながら毒を吐く。
今下っている先には海が一望出来る道へと繋がっており、右に向かってカーブになっている。そこをなるべくブレーキを掛けずに勢い良く曲がるのが日課で、上手くいくと最高にテンションが上がる。
こうして今日も調子良く団地に帰ってきた俺はチャリ置き場前でブレーキをかけるが効きが悪く、チャリ一つ分越して停車する。
「チッ」
せっかくスカッとした気持ちが台無しだとチャリを乱雑に停め団地の一室に入ろうとすると、見えるのは一面に広がる海。
……こっからの景色も良いのによ、何も分かってねー奴らばっかだ。
陽が短くなり部屋の中は薄暗く、明かりもないリビングを駆け抜け自室に走る。
床に学生カバンを放り投げ、ベッドに転がり込み暗い部屋でスマホ。
結局、これが一番良いんだよな。
「ただいま。買い物行ったら遅くなったわー。もー! 電気ぐらい付けなさいって言ってるでしょう!」
ズカズカと部屋に入ってきたかと思えば、またウゼー小言が飛んでくる。
それに言い返すと余計にウゼー言葉が返ってくるから、俺はムシを決め込む。
別に電気ぐらい付けなくても死なねーよ。
最初のコメントを投稿しよう!