ただ今、〇〇しています。

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 それから毎日、俺通信されるようになった。  アカウント削除しても何者かにより新たなアカウントが作られ、俺のくだらねー日常が流出される。  この現状にヤベェかと思ったが、俺だと分かる情報ねーし。フォローしているのも、小学生からバカやってるツレ二人だけ。つまり、十七時三十一分に何もしなかったら良いんだろ? だから、一週間も経てばどうでも良くなっていた。  だから、どーでもいいがこいつらを勝手にフォローするのはマジでやめろ。くだらねー、ネタ提供じゃねーか。  で、丁度良いことが起きた。  二学期の中間テストで提出ノートが出来てなかった俺たちは、放課後教室に残りまとめ作業に追われていた。  そんなこんなで時刻は十七時二十一分過ぎ、例の時間はチャリを爆速させている時間帯だろう。 「じゃあな、今日の報告もリアルタイムで見てやるぜ!」 「うるせー!」  そう軽口を交わし、いつも通り別れる。  俺が速攻で削除するから、アイツらも速攻で見るようになった。でも今日は、『ただいまチャリ爆速中 テンション上がりまくり』とかしか表示されないだろう。  そう思いながら、チャリで坂道を下って行く。  今日は台風が迫っており風が強く、その先に広がる海も荒ぶっていた。  海に近付かないようにと担任が言っていたが、誰がこの寒い中行くんだよ? バカじゃねーの?  そう毒を吐きながら坂を下るが追い風の為か、いつも以上にスピードが出ており、チャリを減速させようとブレーキに手をかけ握り締める。  ……が、チャリは速さを変えず勢いよく坂を駆けていった。  は?  再度両手に力を入れるがその手応えはなく、ブレーキが機能していないと悟る。  こうしていくうちに迫ってくるガードレールとその先に広がる海。  おい、マジかよ! 確かに効き悪かったけどよ、いきなりか? 嘘だろ!  キィー! ガシャン!  ぶつかる直前にブレーキが効いた為か、ガードレールに当たる衝撃は軽減された。  しかしブレーキが効いたのは前輪のみでその反動で後輪が持ち上がったことにより俺の体は宙を舞い、ガードレール先の海に投げ出されるというギャグ漫画みたいなことが起きた。  バシャン!  道路より一メートルぐらい下にある水面に落ちた衝撃と想定外過ぎることに溺れると頭の中がパニックになるが、足は届き水深は身長の半分ぐらいしかなかった。  ダッセー。  そう思いながら全身の痛みに耐えつつ、陸地に上がれる場所を探して周囲を見渡す。  するとその瞬間荒ぶっている波に飲み込まれ、俺の体を奥地に引き摺り込んできた。  え? 嘘だろ。え? え?  なんとか足で踏ん張りその流れを止め陸地に向かおうとするが、次の波がそれを拒むかのように俺の体を拐い、気付けばどんどん水深がある場所に流されていた。  さすがにヤバいと思い叫ぶが、人影はなく誰もこの状況に気付いていない。  全力で陸地に向かうがやはり波も容赦なく、顔は時折海水に覆われ息も途切れ途切れになり、そうしていく間に俺の体力を削っていく。  ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。  今までに経験したことないほどに心臓は激しく鼓動を打ち、息苦しく、得体の知れない恐怖に体が硬直し、ただ流されていく。  俺、死ぬのか? さっきまで、平凡な日常の中にいただろう? ただ盛大に転んだだけだろ? たった、そんだけのことで? 待てよ、待ってくれ。俺が死んだら──。 「直樹ー!」 「助けてください! 友達が溺れています!」  僅かに聞こえてきたツレと思わしき声に俺は足に力を入れて踏ん張り、流されても争い、生きることを諦めなかった。  すると人が集まり投げ込まれたのは紐で括り付けられたクーラーボックスで、死ぬ気でそれにしがみついているとレスキュー隊と呼ばれる人達が来てくれ俺を引き上げてくれた。  こうして助けられた俺は横でウザいぐらいに泣き喚く母親を宥めつつ、助けを呼んでくれたツレ二人に何故事故に気付いたのかを聞いた。 「これ」 『ただ今、海で溺れている。母ちゃん残して死ねない』  渡されたスマホには、そう映し出されていた。
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