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赤ん坊から始まる異世界転生は考える時間が与えられるけど、今の自分はそれとは状況が異なる。僕の目の前に、見たことのないあやしい植物が枝らしきものをうねらせ迫ってきていた。絡み合っているため枝と根の判別がつかないそいつは、幹にできた鋭い牙付きの口からよだれを垂らしている。これはどちらの意味で食べられるんだろう。どっちにせよ、異世界転生した瞬間にモンスターによる触手エンドはつらい。
けれど、今の僕は少年の姿で、武器も攻撃できる手段も持ちあわせていなかった。魔法のある世界に生まれたいと思ったけど、魔法が使えるのかどうかも分からない。
「だ、誰かたすけ……」
微かな希望を胸に声をあげると、おい、と怠そうな声が上から降ってきた。見上げると、美青年が近くの枝に座りこちらを見ていた。
銀髪を後ろで一つに結ったイケメンは、左目が垂れた前髪に隠れて見えないけど、空みたいに澄んだ青の瞳が美しい。見惚れてる場合じゃないんだけど、異世界に見惚れるほどの超絶美形がいるのは本当だった。
「オマエ、何者?」
「分かんない」
この世界に来たばかりだから何もわかりませんね、と言いたいのを我慢し、庇護欲をかき立てるような仕草をしてみる。恥とか外聞とかそういうものは要らない。だって、僕はこの世界では子どもだし、食えもしないそんなものは捨てて良い。
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