一冊の詩集

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一冊の詩集

 孫の那留(なる)にプレゼントする本をスマホで探していた。  よく検索するネットの本屋さん。  本の大好きな子に育ってくれた那留(なる)にプレゼントするのは何冊目になるのだろう。 「ばーば。ありがとう」 声も可愛いたった一人の孫。  動物も昆虫も海の生き物も大好きな子。 今度は何にしようか?  子供向けの本を探していたのに……。  検索候補に一冊の詩集。 それは私が悩み多き十代の頃、街の本屋さんで手に取った物。 この本のお陰で私は今、物書きの端くれとして生きている。  ハードカバーで薄紙に包まれ、紙のケースに入った詩集。 私の宝物だったそれは、何回かの引越しで、何処にいったのか分からなくなった。  文庫本サイズにリニューアルされ綺麗な絵のカバーの付いたそれに私の目は釘付けになった。  孫へのプレゼントと一緒に買い物カゴに入れ購入し、二日後ポストに届けられた。  孫へのプレゼントは可愛いラッピングをして準備した。  そして私の宝物だった詩集。 持ちやすく読みやすい文庫本サイズのそれを開いた。  あの頃の大好きな詩を探す。 それは私の涙腺を心地良く刺激してくれた。 ちょっと寂しい詩だったけれど……。大好きだった。  そしてもう一編。 彼の楽しげな幸せを著した詩。 それも却って私の目に涙を流させた。  若くして病気で亡くなった彼の叶えられなかった夢のような気がして……。  偶然のように出会えたけれど……。  私は運命なんだと思っている。  出会えた事に感謝しながら、もう少し頑張って生きていこうと改めて決意出来た素敵な宝物。  詩人の彼が既に生まれ変わって、何処かで幸せに暮らしていてくれたら……。  それは私の願いでもあった。  一冊の本は人生。  一編の詩は希望。  私の人生に希望を与えてくれた大切な宝物。  何十年の時を超えて、また私の手に帰って来てくれた。  もう引越しする事もないから失くさないように、ずっと寄り添って生きていこう。      了
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