十の悪を集める

鬼が如く

「お前か？　鬼を倒し悪の王になるとほざいているのは？」
　邪見までたどり着いた二人。賀集丸は嘲笑い臆せず立ち向かう。そしてかまわず刃を邪見に向ける。しかし邪見は容易く、するりと躱わし、鋭く尖った爪で賀集丸の背中をざくりと引っ掻く。連戦での疲労と幾つか受けた傷のせいで普段の動きが鈍る。
「なんだ？　口だけか？」
　邪見はすぐさまもう片方の腕を振り下ろす。賀集丸は素早く振り向き刃で受け止めようとしたが一歩遅れ止めることができず、そのまま邪見の爪は賀集丸の肩から脇腹まで深く引っ掛かれる。血が吹き出す。刃を地に突き立て肩で息をする賀集丸。
「おやおや……ここまでかい？」
　二人の対峙を見守る囨頭憑雲が口を挟む。
「黙れ……この程度の傷は痒いも同然……」
　賀集丸は目を静かに閉じる。邪見の気配を空気で感じた。逆に邪見は賀集丸の動きに戸惑う。
「ほう……賀集丸のやつ……気づいたか……邪見は相手の目の動きで攻撃を読んでいたのを……」
　囨頭憑雲は笑む。
「また一歩近づくか……悪の王に……」
　賀集丸は刃を峰打ちするがごとく持ち変えた。
「閃(せん)──！」
　言葉を発すると賀集丸は光の早さのごとく邪見との間合いを詰め喉元に刃を突きつけた。
「がはっ……」
　邪見の喉には賀集丸の刃が突き刺さる。
「舞(まい)──！」
賀集丸はかっと目を見開き刃をそのまま振り上げた。邪見は喉元から顔を一瞬で切り裂かれた。そしてそのまま倒れこむ邪見。
「これはこれは邪見のやつ……何が起きたか分からずあの世逝きじゃの……」
　邪見の返り血と自身の血で赤く染まる賀集丸は恍惚な笑みを浮かべ『邪見』の巻物を奪いそして……右肩に『邪見』の文字を刻みこんだ。
「あと残り二匹だ！！」