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出会い
賀州丸という男。世間で噂を聞かない者などいない。悪の限りを尽くしていた。特に悪行を生業にする者にとってこの男の名前は頭に媚りつくほど畏怖するものだった。
「悪の限りを尽くし、悪が栄える国の王になりたい」
賀州丸は口癖のようにその言葉を発し町に襲いかかった。襲われた町は一夜にして廃墟寸前まで追い込んだ。賀州丸は徒党は組まず一匹狼的存在だったがあまりにも強い。各国が兵を募り討伐を試みたがことごとく賀州丸は打ち破ってきた。この世に勝てる者などいないのではないかと思われるほどの強さだった。
ある日、賀州丸はひとつの町を襲い、その町一番の富豪の屋敷に住み着きくつろぎ身体を休めていた。
「俺に敵う者などこの世にいない」
百戦錬磨の賀州丸は一人豪語した。
「そなた強いのう。ここまで強い人間見たことないが……」
後ろから声をかけられた賀州丸は愛刀を握りしめ振り向く。そこには一人のみすぼらしい男が立っていた。足が悪いらしく刀を杖にしていた。その刀には幾重も護符が貼りつけてあった。
「何やつだ?」
賀州丸は身構えた。男はにやつきながら賀州丸の前に座った。
「お主、悪が栄える国の王になりたいと触れ回っておるらしいの?」
「そうだ……俺は悪の王になる。誰も止められないがな……」
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