両舌

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両舌

 賀集丸は両舌にやや苦戦するも徐々に圧倒していく。 「なんだなんだ? こんなものか……鬼とは名ばかりで弱いもんだな」 「ま、待て……巻物はくれてやる……それにお前の下について働く……だから命だけは……」  両舌は命乞いをする。 「そうか……でもな……」  賀集丸の刃は両舌の腹部を貫いた。 「ぐわっ──」  両舌はのたうち回り息絶え絶えになる。 「てめぇの名は両舌……つまり二枚舌だろ? そんな奴が仲間になればいつ何時、裏切るか分かったもんじゃない……そんな奴はいらん」  賀集丸が腹部から刃を引き抜くと一閃。両舌の首を跳ねる。首は囨頭憑雲の足元に転がる。 「見事なもんじゃの……両舌さえ相手にならぬか……」  両舌から奪った巻物はするすると賀集丸に巻き付き、賀集丸の左脛に『両舌』の文字が刻まれた。 「後は悪口(あっく)慳貪(けんどん)邪見(じゃけん)瞋恚(しんに)そして殺生(せっしょう)の五匹……」
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