穿つ

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穿つ

「がはっ……」  倒れこむ賀集丸。圧倒的な力でねじ伏せられる。怒りの鬼、瞋恚(しんに)は凄まじい形相で手にした金棒を賀集丸の頭めがけて振り下ろす。なんとかかわす賀集丸。しかしかわしきったと思った矢先賀集丸の足元がよろめく。金棒は賀集丸の頭を掠めていた。血が滲む。傷を負った傷口から血液が流れ出し賀集丸の片目を塞ぐ。人では振り回すことの出来ないほどの重量のある金棒を軽々と振り回しそれを何度も賀集丸めがけ振り下ろす。よけるも風圧が凄まじい。幾度と飛ばされる賀集丸。 「腹立たしい……人間に倒された鬼がいるとは……ならばお前を倒しそやつらの巻物を私が譲り受け私が王になる……」  瞋恚は構えた金棒を水平に振り抜く。賀集丸は気力を振り絞り金棒に飛び乗るように着地し後ろに飛び回避する。 「近づけぬ……懐に……」 「お前の力では無理だ……」  瞋恚はかまわず前進し金棒を賀集丸の目の前で振り上げる。 「死ねぇぇぇ」  なんとかかわすが振り下ろした風圧が賀集丸を襲う。 「閃──」  賀集丸は一点に集中するように刃を向ける。まるで風圧を切るように……。風圧は賀集丸の刃に切り裂かれていく。全身にかまいたちのようになった風圧は賀集丸の身体のいたるところに傷をつけた。しかし賀集丸は微動だにせず刃物のような風が通り過ぎた瞬間、瞋恚の心の臓めがけて刃を向ける。 「穿(うがつ)──」  賀集丸の刃は見事、瞋恚の心臓を貫いた。
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