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最後の一匹……
倒れこんだ瞋恚は心臓を貫かれピクリとも動かない。賀集丸はその場に尻餅をつき肩で息をした。
「九匹目……」
瞋恚から巻物を奪うと賀集丸の額に『瞋恚』の文字が刻まれる。
──カツ……カツ……──
背後から杖をつく音が近づき声がかかる。
「見事なもんじゃの……」
「当然のことよ。この程度……あとは殺生のみ。なぁ……そうだろ?」
「そうだ。あと一匹で賀集丸……お前は王だ……」
囨頭憑雲は笑うが殺気がほとばしる。
「そうか。で、最後の一匹は……」
賀集丸は振り向き刃を握り切っ先を囨頭憑雲に向けた。切っ先はほぼ囨頭憑雲の目の先だ。しかし囨頭憑雲は瞬きすらしない。
「あと一匹とはお前のことか?」
囨頭憑雲はにやりと笑う。
「何を言っている……? 賀集丸よ……」
「舞──!」
その瞬間、切っ先が上空へ振り上げられる。さらりと躱わす囨頭憑雲。が次の瞬間、賀集丸は刃を瞬時に持ち変え振り下ろす。囨頭憑雲はさらに躱わすが全ては躱わせず羽織っていたものは切られ胸元があらわになった。そこには胸元に『殺生』と刻まれた囨頭憑雲が立っていた。
「やはりな……お前が最後の一匹だな……」
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