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それから、私はオサダから小説の続きを受け取る代わりに、自分も小説を書いてオサダに渡さなくてはいけなくなった。
私はオサダのように自分だけの世界なんか持っていない。だから、いろんな小説の見様見真似でとりあえず書いてみるしかなかった。
オサダに見せると、「ふーん、いいんじゃねえの」
と適当な感想が返ってきた。
「本当にいいと思ってる?」
私は、オサダの言葉が信用出来なくて、つい口をとがらせた。
「全然ダメでしょ。全然面白くない」
「別に面白くないとは思わないけど」
ケロッとした顔でオサダは言った。
「でもさ、なんかちょっとお前のはカッコつけてる感じあるよな」
「カッコつけてる?」
「俺に見せること前提で書いてるだろ?だから自分の恥ずかしい部分を隠してる感じがする。ようはカッコつけてる」
「……だって実際オサダが見せろっていうやつだし……」
「俺なんかな、人に見せるつもりじゃなかったから、あんだけ自分の趣味丸出しで書いてんだよ。お前ももっと趣味丸出しで書けよ」
「えー、私とオサダ、そこまでの仲じゃないし」
「散々俺の小説読んどいて何て言い草だっ」
オサダはプリプリとほっぺを膨らませた。
結局、私はオサダから案外辛辣な意見をもらいながら、オサダの小説の続き見たさに、何本も小説を書いた。
「こんだけ書いたら、私のほうが小説家になれちゃうよ」
「なりゃあいいだろ」
オサダは素っ気ない。なので、私は意地悪そうな顔をして見せながら言った。
「私が小説家になったら、インタビューで、『小説を書くきっかけになったのは、同級生のオサダハジメくんの自作小説を読んだことです』って言っちゃうからね。そしたらオサダは注目されちゃうよ。そしてこの面白小説が世間に見つかっちゃうんだ!」
「絶対無いね。お前はカッコつけだからな。キッカケはって聞かれたら、絶対どっかの外国作家でも答えるだろうなー」
オサダも意地悪く笑う。
そんな事ない!と言い返したかったけど、オサダの言う通りになりそうだな、と私はその時思った。
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