俺だけの世界、俺だけの物語

4/6
前へ
/6ページ
次へ
それから、私はオサダから小説の続きを受け取る代わりに、自分も小説を書いてオサダに渡さなくてはいけなくなった。 私はオサダのように自分だけの世界なんか持っていない。だから、いろんな小説の見様見真似でとりあえず書いてみるしかなかった。 オサダに見せると、「ふーん、いいんじゃねえの」 と適当な感想が返ってきた。 「本当にいいと思ってる?」 私は、オサダの言葉が信用出来なくて、つい口をとがらせた。 「全然ダメでしょ。全然面白くない」 「別に面白くないとは思わないけど」 ケロッとした顔でオサダは言った。 「でもさ、なんかちょっとお前のはカッコつけてる感じあるよな」 「カッコつけてる?」 「俺に見せること前提で書いてるだろ?だから自分の恥ずかしい部分を隠してる感じがする。ようはカッコつけてる」 「……だって実際オサダが見せろっていうやつだし……」 「俺なんかな、人に見せるつもりじゃなかったから、あんだけ自分の趣味丸出しで書いてんだよ。お前ももっと趣味丸出しで書けよ」 「えー、私とオサダ、そこまでの仲じゃないし」 「散々俺の小説読んどいて何て言い草だっ」 オサダはプリプリとほっぺを膨らませた。 結局、私はオサダから案外辛辣な意見をもらいながら、オサダの小説の続き見たさに、何本も小説を書いた。 「こんだけ書いたら、私のほうが小説家になれちゃうよ」 「なりゃあいいだろ」 オサダは素っ気ない。なので、私は意地悪そうな顔をして見せながら言った。 「私が小説家になったら、インタビューで、『小説を書くきっかけになったのは、同級生のオサダハジメくんの自作小説を読んだことです』って言っちゃうからね。そしたらオサダは注目されちゃうよ。そしてこの面白小説が世間に見つかっちゃうんだ!」 「絶対無いね。お前はカッコつけだからな。キッカケはって聞かれたら、絶対どっかの外国作家でも答えるだろうなー」 オサダも意地悪く笑う。 そんな事ない!と言い返したかったけど、オサダの言う通りになりそうだな、と私はその時思った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加