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フラッシュの光で我に返る。
そうだ、授賞式の途中だ。
別に、私は、オサダの小説が読みたいから小説家になったわけじゃない。それは全然関係ない。
それでも。
私は、脳内のカンペを破り捨てた。
「それはそうとして、運命の一冊、と言ったら私にとって唯一無二の大事な小説があります。それは商業作品ではありません」
オサダに言われたから言うわけじゃない。
もうあの時みたいに、オサダの小説を他の人にも見せてやりたいなんて思ってなんかいない。だって今なら私は、あの時の、俺だけの物語だと言い切ったアイツの気持ちが分かるから。
それでも、運命の一冊と言われたら、他の作品を出すわけにはいかないのだ。
「高校の頃の同級生がノートに書いた小説、それが私の運命の一冊です。その小説は……」
さて、名前は出さないけど、オサダの小説の魅力を少しだけ語らせて貰おう。
ただ、私はオサダの言う通りカッコつけなので、さすがに一番大事な事は言えないと思う。
オサダの美しい小説は、恋愛ファンタジーの形をしたエロ小説だったのだとは
End
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