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その豪邸の前まで行ったことはあるけど、中に入るのは初めてだった。
挨拶もそこそこに、彼女は自分の部屋に入れてくれた。もちろん僕のワンルームのアパートとは桁違いに広い部屋だ。
「いやあ、凄い部屋だねえ…何畳あるの、これ…あ、畳なんて言わないか、ははは…」
彼女は何も答えず、テーブルの上に置いてあったポテトチップスを食べ出した。
「で?なんか用?」
「いや…別に…まあ…ただ会いたかっただけで…」
「ふん」
恐ろしく冷たい表情。
やっぱり来なけりゃよかったかな、と思いながらふと机の上を見ると、映画のパンフレットが一冊置いてあった。なんとそれは僕が持っていた恋愛映画のパンフレットだった。
彼女は一瞬、しまい忘れたものが見つかったというような顔をしたけど、すぐに元の冷たい顔に戻った。
「まあ…悪くないじゃん」
「え?」
「その映画…ロマンティックで…」
「でしょ?」
まさか彼女の口からロマンティックなんていう言葉が聞けるとは思わなかった。なんでも暇つぶしにアマプラで観たらしい。
「え?じゃあ、ほかのパンフもとってくれてるの?」
彼女は頷いてパンフレットを手に取り、ペラペラとめくる。
「ラストシーンがよかったなあ…」
そう言われて僕の頭の中にもラストシーンがよみがえってきた。
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