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「ねえ、お父さんとお母さんって離婚……したんだよね? うちの鍵をお母さんから預かったって言ってたけど、仲直りしたの?」
「んー……仲直りというか、単純に俺が凛華に会いたすぎたんだよね。もちろんお母さんには嫌な顔されたよ。でも俺の熱意を受け取ってくれて鍵を貸してくれたんだ。やっぱり俺のことはまだ許してないだろうから、凛華とずっと一緒にいることはお母さんには内緒だよ?」
恋愛すらしたことのない私だから大人の事情はよくわからない。ただ父がそうして欲しいと言うのなら、私はそれに従うだけだ。私が頷くと、父は「ありがとう」と微笑んだ。
そんな会話をしてから数日後。噂をすれば突然母からメッセージが来た。
『近いうちに話せない?』
その通知が来た時は舞い上がった。私は母のことも大好きだ。父より断然厳しいし、時には口うるさすぎて腹が立って口論になったりする。でも私のことを一番に思ってくれる大事な家族だ。最近忙しかったから母とも全然会えておらず、気づけば一ヶ月以上声を聞いていなかった。だから私は空きコマでたまたま一人家にいたそのタイミングですぐに返信した。
『じゃあ今は? 電話したいな』
私がそう返すと既読はすぐにつき、直後に電話がかかってきた。一コールが鳴り止むのを待たず私はすぐに電話に出た。
「ねえ。お母さんに隠してること、ない?」
会話が始まってすぐ、母は私にそう聞いた。それを言われて頭に浮かんだのはそう、父の顔。私は父と住んでいることをずっと母に言っていない。ついこの間父に「お母さんには言わないで」と言われたところなのだから、なおさら黙っている。隠し事といえばそれしか思い浮かばないから、私の冷や汗は止まらない。
「なんで?」
厳しく怖い母に嘘をつけない私はとりあえずそう返す。母は一体何を知っているのだろうか。
「何となく。親の勘ってやつよ」
スマホを持つ手のひらにじわじわと熱がこもる。そうなんだ、と私は苦笑いをする。
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