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「大学に通いながら仕事もしてるんだ。すごいね、凛華」
私が落ち着くと二人で床に座ってベッドの前に置いてあるテーブルにつき、買ってきてくれていたミルクティを飲みながら私の今を話した。父は感心したように目を丸くした。それが嬉しくてつい顔が酷くニヤけてしまいそうになる。誤魔化すために袖に収めた手でペットボトルを持ち、また口をつける。甘い。
「お父さんは今どこに住んでるの?近く?」
「少し離れているよ。ここからだと職場の方が近いかな」
きっと父も仕事終わりなのにわざわざ私のところまできてくれたんだ。なんだか申し訳なくなる。
「それにしても遅いんだね? 仕事。まあ芸能界なんて不規則で大変な仕事だよね」
「でもみんないい人たち。プロデューサーも、応援してくれるファンの人たちも。テレビに出るようになってからは大学の人たちにばれちゃったけど、みんな応援してくれるよ」
支えてくれる人がたくさんいたから、今こうやって父に会えた。辛いこともあったけど、夢が叶うと人は感謝したくなるものなんだろう。
「凛華は可愛いだけじゃなくていい子だからだよ。みんなそれを感じ取るから応援したくなるんじゃないかな」
父に「可愛い」と言われたことが嬉しくて顔が熱くなる。可愛さを表現することも忘れぐびぐびとミルクティを飲む。
「それ、好きだった?よかった。苦手だったらどうしようと思ってた」
そんな私を見て父は笑いながら言った。途端に恥ずかしさが込み上げて苦笑いをしながら「うん、好き」と答えた。
「芸名は確か、七瀬凛、だったよね? 本名を残したんだね。すごくいい」
私の本名は北村凛華。「凛」は私のイメージに合っているからとプロデューサーはそう私を名付けた。
「デビューしたのが二十で、普通より遅かったんだよね。メンバーもみんな年下でさ。所属してるグループのコンセプトが姉妹だから必然的にお姉さんキャラになっちゃうんだけど、そのイメージに合ってるって」
説明すると、父は「確かに」と首を縦に振った。
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